▲「ルーキー断片線」シーズン4 チョ・ヒョナ「水槽」
■今年の春頃に出たB録収録の記事で、韓国のwebtoon作品を紹介する文章を書かせていただきました。それは「JKドラゴン」や「僕たちはゾンビ」など数作についてさらっと書いただけで正直不十分なものとなりました。今回、もうちょっと加筆してみたく思いました。B録の内容と重なる部分がありますが、そこはご容赦下さい。
■ここ数年で、LINEマンガやピッコマなどで多くの日本語訳された韓国Webtoon作品が読めるようになりました。しかし、初心者だとどこから手をつけていいかわかりません。正直、この程度なら日本のマンガを読む方がいいと思えるレベルの作品が少なからずあるのも事実です。とはいえ、中には隠れた名作みたいなものもあったりして、そういうものを発掘するのもまたオタク的な楽しみの一つです。
私もこれまでかなりのところを直感による選択でお勧め作品を選択してきましたが、これはどうにも効率が悪い。日本の「このマンガがすごい」のようなガイド本やカタログ的なものはないだろうか?
▲ハ・イルグァン「病気の味」
▲2014年の「ルーキー断片線」表紙
多分チョ・ヒョナの絵
▲「ルーキー断片線」シーズン5
チョ・ヒョナ「大晦日」
韓国には大きな漫画賞として「今日の私たちの漫画賞(오늘의 우리만화상)」と「富川漫画大賞(부천만화대상)」というのがあります。前者は韓国の文化体育観光部が主催し、韓国漫画映像振興院が主管する形で1999年から始まります。後者は同じく韓国漫画映像振興院が主体となり2004年から始まった賞ですが、前者が実際の人気や売れ行きを反映したものに対し、後者はやや頭でっかちな選択になっているところがあるようです。
パラグアイを拠点とする韓国語wikiの「ナムウィキ(나무위키)」や韓国語版wikipediaを利用すると、それぞれ各年の受賞作品と作者が一覧として掲示されており、今回はそれらを参照に受賞作品を見ていきます。
なお、私はブラウザにはGoogle Chrome を利用しており、これの自動翻訳機能で日本語訳をして読んでいますが、表音文字であるハングルの日本語訳には誤訳も多く、便利になったとはいえまだまだ難儀しています。例えば、「大賞」の「대상」が「対象」と訳されたり…面倒だからAIなんとかして。
■「今日の私たちの漫画賞」の受賞作をざっと見て…2014年のsoonkki(순끼)「チーズ・イン・ザ・トラップ(치즈인더트랩)」、2016年のイ・ドンゴン(이동건)「ユミの細胞たち(유미의 세포들)」、そしてコロナ禍がはじまる直前の2019年にはハ・イルグァン(하일권)の「病気の味(병의 맛/Taste of Illness)」、チョ・ヒョナ(조현아)の「縁の手紙(연의 편지)」が受賞しているのが目に入ります。
ハ・イルグァンはNAVERウェブトゥーンの初創期を導いた作家の一人で知名度も高く、前にここでも紹介しました。作品のいくつかは日本語訳され、LINEマンガで「SPERMAN」、「お風呂の神様」、「アンナラスマナラ~魔法の呪文~」などの過去作品が読めます。「病気の味」はまだ日本語訳はされていませんが、英語訳されたものが「Taste of Illness」のタイトルで読めるようです。
チョ・ヒョナ(조현아)の「縁の手紙(연의 편지)」も以前ここで紹介しました。日本語訳版がLINEマンガで読めるだけでなく、マガジンハウスから紙の本として出されてもいます。今年の夏にアニメ化という話もありましたが、どうなっていることやら。
そのチョ・ヒョナについて今回ちょっと調べたところ、世宗大学のイ・ドゥホ(이두호)という教授が2001年から始めた新人マンガ家発掘イベント「地獄キャンプ(지옥캠프)」の出身者だったようです。このイベントで描かれた短編作品は「ルーキー断片線(루키 단편선)」として2011年からNAVERに掲載され始めますが、チョ・ヒョナの作品は2014年のシーズン4に「水槽(수조)」、2015年のシーズン5に「大晦日(섣달 그믐)」という作品がアップされ、これらは日本語訳はまだですが、今でも閲覧可能です。まあこの頃から完成された絵の達者さがあり、正直ホレボレします。これらの作品も是非とも紙媒体で手元に置いておきたいです。
なお、「地獄キャンプ」の「ルーキー断片線リスト」はナムウィキで検索すると出てきます。他の短編作品にも関心のある方はそこらから辿ってみて下さい。
▲イ・ウンジェ「ONE」
■ちょっと時系列が前後しますが、「今日の私たちの漫画賞」の2018年の受賞作品、原作:seri 作画: biwan(비완)の「彼女の沈清(그녀의 심청)」、原作:イ・ギョンタク(이경탁)作画:ノ・ミヨン(노미영)の「レヴィアタン 〜深海獣の海〜(심해수)」の二作は日本語訳されピッコマで読めます。
前者は、物乞い出身の女性と高級官吏に嫁ぐ女性との関係を描いた百合作品、後者は。海面が上昇しその海を化け物が跋扈する世界観のポストアポカリプスもの。どちらもこの原稿のために調べる中で見つけた作品でまだ読んでいる途中ですが、まあどちらもそこそこ面白く読めそうです。
■そしてコロナ禍が始まった2020年、私もこの頃からLINEマンガやピッコマで韓国webtoonを読み始めたためか、馴染み深い作品が沢山出てきます。
まずイ・ウンジェ(이은재)の「ONE」。苛烈なイジメが蔓延する中で必殺仕掛人的に不良学生を制裁していく話です。前作「TEN」は、暴力が支配する強制収容所的な学校に入れられた主人公がボクシングを習いサバイバルする話でしたが、この「ONE」は「TEN」の世界観の延長線上にあります。
作者のイ・ウンジェは正直絵は平均点やっとレベルですが、話は確実に面白い。彼の作品は[ONE]をはじめ多くが日本語訳されLINEマンガやピッコマで読めます。卓球をモチーフにした最新作「ペンホルダー」は残念ながらまだ日本語訳されていません。
余談ですが、イ・ウンジェは、90年代半ばから20年ほど続いた学園アクション漫画、イム・ジェウォン(임재원)の「チャン(짱)」という作品のファンだったらしいです。この長期連載作品を追うことで、当時の韓国のマンガ事情(図書レンタル店やネット上のデジタル複製「スキャンボン(스캔본)」の普及でマンガ市場が打撃を受けた等々)が垣間見える感じですが、これはまた次の機会に。
▲Carnby原作「全知全能」(左) 「スイートホーム」(右)
▲「僕たちはゾンビ」
▲「僕たち~」の女性キャラたち
▲ワナン「家がない」
「ようこそ305号室へ」
「HANA」
「森の中のダン」
「恋するアプリ」
「私たちは水の上」
「私たちは水の上」
▲「ガベージタイム」
■2020年には原作:キム・カンビ(김칸비)、作画:ファン・ヨンチャン(황영찬)の「スイートホーム(스위트홈)」も受賞しています。
人々がクリーチャー化していく中でマンションに取り残された人々によるサバイバルを描いた作品で、日本語訳されたものがLINEマンガで読め、またこれを基にしたドラマが20年12月よりNetflixで公開、現在はシーズン3が公開されています。
キム・カンビとファン・ヨンチャンのコンビには、シリアルキラーの父親と共犯関係にある主人公の対立や葛藤を描いた「バスタード(후레자식)」という作品があり、また、原作:Carnby(キム・カンビ)で作画:RH Song(송래현)の「全知全能(천치전능)」という作品もあります。
「全知全能」は、交通事故で足が不自由になるなどで人生やけっぱちになったヤンキーのジョンジが、「神」の気まぐれにより、スマホ越しに誰かの願いをかなえるミッションを課せられるといった話。ボーイッシュな守護天使のイム・シヤンが飄々として頓珍漢でなかなかいい味を出しています。これは結構お勧め作品です。
「バスタード」も「全知全能」も、あと「猟銃少年」という作品もCarnby原作でLINEマンガで日本語訳が読めます。
■2020年はあとナ・ユンヒ(나윤희)の「クジラ星(고래별)」、オ・ソンデ(오성대)の「奇々怪々(기기괴괴)」、チョン・ヨンロン(정영롱)の「ここ(個々)〜それぞれの日常〜(남남)」の三作品。
「クジラ星」は日帝支配時代を舞台にした人魚姫をモチーフにしたロマンス作品、「奇々怪々」はスリラー作品のオムニバスで日本語訳がLINEマンガで読め、またその中のエピソード「整形水」はアニメ化もされました。
そして「ここ(남남)」ですが、今回この原稿を書くにあたり初めて日本語訳の数話をピッコマで読みました。
もと不良の母親が高校生の時に産んだ娘と、その母親との二人暮らし。男性向け萌えエロではなく、「フィールヤング」的に明け透けに性的な話や描写がある感じの女性向け作品です。
なお、この作品もテレビドラマ化されたようですが、予告編を見た限りではエロいコメディ扱いで、うーんそれはどうなんだろ。
■2021年にはチョン・ジフン(정지훈)の「ザ・ボクサー(더 복서)」が受賞。殆んどSFや哲学の域に入ったボクシング作品です。
チョン・ジフンは他にもポストアプカリプス世界を描いた「地平線(수평선)」や、進化した蚊によって人類が滅亡の淵に立たされる「蚊取り戦争(모기전쟁)」のような名作を描いており、これらはLINEマンガやピッコマなどで読めます。「アポカリロマンス(아포칼립로맨스)」のような未日本語訳作品も早いとこ対応希望。
2021受賞作品には他にイ・ジョンボム(이종범)の「ドクターフロスト(닥터 프로스트)」という心理学をモチーフとした作品が日本語訳されLINEマンガで読めますが、これはまた読み始めたばかりで評価は微妙。ちなみに、この作品もドラマ化されているようです。
■2022年には私にとっても思い入れのある作品が受賞しています。
まず、イ・ミョンジョ(이명재)の「僕たちはゾンビ(위아더좀비)」。
これは、突然発生したゾンビパンデミックにより超大型ショッピングモールで隔離された人々が、ゆるーく連帯し助け合いながら、いつか外の世界に出るまでのモラトリアムを共に歩み、そこそこ成長していくといった話です。
主人公インジョンは特に取り柄もなく何かやりたいことがあるでもないダメ人間です。他にも、推理作家志望ながら一本も作品を完成させたことがないジョンソンや、気弱で自分の正しい名前も言えないチョロンや、ゲームばかりしていて太ったソヒョンなど、まあいわばダメ人間ばかり、言ってしまえば、ゾンビとあまり変わらない「生きているのか死んでいるのかわからない中途半端な存在」が集まっています。その姿は作者のイ・ミョンジョの姿を反映しているらしいですが、それはまたそれを読むダメ人間な自分自身の姿を見ているようでもあります。
ひるがえって女性キャラたちは、決してそういうダメ男たちを無条件で好いてくれるような都合のいい存在には描かれません。戦闘能力が高いソヨンが典型ですが、必要以上に媚びたり愛想笑いをしたりはせずクールです。また、気圧されるほどポジなキャラもいて、とにかく、ダメな気弱男子にとっては苦手そうな子ばかりです(現実の女性も普通にそんな感じのような気もしますが)。
そして、一見アニメ的な絵ですが、大きな目など萌えアニメのお約束・記号的なディフォルメはあまりなく、特に全ての女性キャラが胸のふくらみが描かれていません。
まあ狭い空間での共同生活であまり恋愛的なことを描くとドロドロしてしまいかねないので敢えて性別の記号を排除したのかもですが、そういう結果的には萌えオタに媚びない女性の描き方が、かえってその世界観を居心地のよいものにしている感じがします。
多分このショッピングモールにゾンビと共に隔離されるという設定は、現実社会での引きこもりのメタファーなのでしょう。外の競争社会から隔離されたモラトリアムな生活を頭から否定する描き方はされていない。しかし、いつまでも続けるワケにもいかないものでもあり、最終回ではそこから出てそれぞれの道を歩み始めます。あとがきに添えられたその後のエピソードは押し付けがましくなく、まあ、本当にいい感じでした。
韓国の少なからぬ人々がこの作品を好ましく思ったことには、何か連帯感のようなものを感じます。多分、同じようなものに心を動かし、同じようなものにウンザリしているのでしょう。
■ワナン(와난)の「家がない(집이 없어)」も思い入れのある作品です。というか作者のワナンに。
行き場のない者たちが廃墟同然の寮に住むようになり、そこで軋轢を生じ騒動を起こす。はじめは黒岩健太と白川玲の二人のキャラの話で進み、だんだん打ち解けてきたかと思っていたら新しいキャラが登場し、新しく行き場のないエピソードを持ってきてまたひと騒動ふた騒動という展開となります。
ワナンは前作「HANA」では、特殊能力を持ち実験体とされた子供を主人公に、やはり行き場や居場所を失った者たちの話を描いています。ギャグやコメディ仕立てなので見失いがちですが、個々のキャラの持つ深層的なものを掘り下げて表現するのが上手い、非常に達者な作者です。
「家がない」も「HANA」もLINEマンガで日本語訳が読めます。実はこの人のデビュー作「ようこそ、305号室へ(어서오세요, 305호에!)」もかつては日本語翻訳版が読めたらしいのですが、権利関係からか今は読めなくなっています。ナムウィキによると、BL的な文脈ではなく、ギャグではありながらLGBTQに深く切り込んだ作品であったようです。ネットを探ると当時から結構なファンがいたようで、私も是非とも読んでみたい。LINEマンガさんあたりで再掲の検討お願いしたいです。
■2022年はこれらの他に、今更ながらチョン・ゲヨン(천계영)の「恋するアプリ(좋아하면 울리는)」が受賞しています。チョン・ゲヨンは96年デビューのベテランで、「恋するアプリ」は連載開始が2014年。2019年からNetflixでこれを原作にしたドラマが配信されています。多分ドラマのヒットが今更の受賞の要因のようです。
Dahong(다홍)の「森の中のダン(숲속의 담)」も受賞。ポストアポカリプスな世界の中で、植物の繁殖を促す能力を有する年をとらない少年ダンが仲間の子供たちと奮闘する話。これらもLINEマンガで日本語訳が読めます。
■2023年の受賞作はまずこれ、原作:Babbird(뱁새)、作画:WALP(왈패)の「私たちは水の上(물위의 우리)」。大きな地殻変動で陸地の大半が水没した世界という設定は「未来少年コナン」かよと思います。ここに「よつばと」のよつばのように奔放な子供ビョルを主人公として投入したような作品になるのかなーと思って読んでいったら、まあ容赦ない残酷な殺し合いシーン満載でした。コナンの世界観どころではないくらい世界は残酷で無慈悲で救いがありません。
この作品は今LINEマンガで日本語訳を読み進めている最中ですが、残酷な戦闘シーンにちょっと食傷気味。ビョルや子供たちのエピソードをもっと読みたいです、但し残酷でないものを。
■珍しくバスケットボールをモチーフにした作品も受賞しています。2sazang(2사장)の「GARBAGE TIME(가비지타임)」。
実在した釜山の弱小高校バスケ部が、新任の監督のもと躍進していったエピソードをモデルにした作品。私はバスケに詳しくはありませんが、韓国のバスケ事情に基づきかなり専門的に突っ込んだものになっています。日本のサッカー漫画「GIANT KILLING」に傾向が似ているかもしれません。
絵はそこそこ上手くキャラも立っているので、上手くいけば日本でも大人気になるかも。特に女性に。
なお、LINEマンガの日本語訳版は登場キャラの殆んどは大阪弁をしゃべります。別のwebtoon作品で釜山を舞台にしたのがやはり大阪弁だったので、韓国での釜山訛りは大阪弁のイメージなのかもしれません。
▲「未来のアンティークショップ
▲「はやおくり」
「少女裁判」
▲「あなたの標的」
■「富川漫画大賞」の受賞作品については今回は省略。関心のある方は各自、ナムウィキなど駆使して調査してみて下さい。
韓国の漫画賞には「今日の私たちの漫画賞」と「富川漫画大賞」以外に、「大韓民国コンテンツ大賞 マンガ部門(대한민국콘텐츠대상 만화부문)」というのがあるようです。認知度は低いながら、文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院が毎年主催しそれなりの権威がある賞で、韓国での各年のヒット作を知る資料として機能しそうです。
例えば、2011年のチュ・ホミン「神と共に(신과함께)」、2015年のパク・ヨンジェ「ゴッド・オブ・ハイスクール(갓 오브 하이스쿨)」、2016年の趙爽(チョソク)「ココロの声(마음의소리)」、2019年のキム・ヨンキ「他人は地獄だ(타인은 지옥이다)」、2020年のSIU「神の塔(신의 탑)」などは、それが本当に面白く思えるかは別に、その年に韓国で売れて知名度が高かった代表的な作品なのは確かです。
まだ日本語訳されておらず未読なのですが、2022年の受賞作、グアジン(구아진)の「未来のアンティークショップ(미래의 골동품 가게)」という作品は注目しています。正直、グアジンという人の他の作品の絵を見ただけですけど、めっちゃ達者な人です。殆んど直感ですが、この達者な人が描いた作品なのできっと面白い(雑)。早いとこ日本語訳して読めるようにして下さい
■NAVERが2019年から開始した公募展の「地上最大公募展(지상최대공모전)」もまた作品選別の参考になります。大賞、最優秀賞、優秀賞、奨励賞とランクがついており(2023年から「読者の人気賞」が追加)、まだ調査をし始めたばかりですが流石に上位の作品は力量が感じられるものが多いようです。
これはナムウィキで各年度の受賞作の一覧を見ることが出来ます。
この一覧にあがった作品のうち2019年3期の大賞、原作:ルズナ(루즌아)、作画:BOROCOM(보로콤)の「少女裁判(소녀재판)」や2020年一期の奨励賞、原作:Porto(포르토)、作画:Junki Hong(홍준기)の「はやおくり(빨리감기)」などいくつかは日本語訳されていますが、まだ大賞や最優秀賞の作品の日本語訳は殆んど行われていません。英語圏の市場を意識してか、そちらの翻訳は進んでいるようですが、うーん…
■と、日本語訳を待望する話ばかりしてきましたが、最近はPC用のグーグル翻訳で画像イメージを読ませると文字を翻訳してくれる機能までつくようになりました。本場NAVERのアカウント登録方法を教えてくれるサイトやら、ボランティアで韓国のマンガを自主的に翻訳するサイトやらもありで、ただ手をこまねいているだけじゃダメかもです。
ただまああと5年もすれば、自動的にWebtoonの画像イメージの文字もイッキに正確に自動翻訳してくれるような無料アプリが出来ているかもしれません。
だって、5年ほど前のこと考えたら…あの頃は、釜山まで行ってマンガ雑誌を購入して、それをスマホのグーグル翻訳アプリで自動翻訳したり韓日辞典を引いたりして必死で読み下していました。それに比べれば今の状況ってウソみたいに進歩して便利になっていますからね。この調子で進んで欲しい。
■今回の韓国のマンガ賞から見るという切り口での作品紹介からは漏れてしまいましたが、他に、ピーナッツ(땅콩)の「JKドラゴン(여고생 드래곤)」や、「ゾンビ娘」のイ・ユンチャン(이윤창)の新作「ネイチャーマン(네이처맨)」、セイジュン(양세준)の「西北の死神(서북의 저승사자)」、趙爽(조석)の「ムーンユー(문유)」など推したい作品はまだ少なからずあります。
そんな中で私の今一番の推し作品は、コ・テホ(고태호)の「あなたの標的(당신의 과녁)」です。
人生の絶頂期に突然シリアルキラーの罪をなすりつけられ、死刑囚として17年間刑務所で過ごすことを余儀なくされた義信(최엽)は、冤罪が判明して解放された後、家族やかつての友人たちと再会し、そして既に死んでしまった真犯人の家族に復讐を果たそうとしますが、その実行の時に思わぬ事態が発生し…。
単純な復讐劇ではなく、主人公や周囲の人物の葛藤や苦悩が深く描かれており、よくできた小説を読むようにどんどんその深みに引き込まれます。
正直絵はヘタッピながら表現自体は実に達者で、話は確実に面白い。これもLINEマンガで日本語訳が読めますので、ぜひ読んでみて下さい。
■今回は原稿作成10日くらい前に、Netflixで「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」を全26話イッキ見したり、小倉のシネコンでディズニー&ピクサーの「インサイド・ヘッド2」やマーベルの「デッドプール&ウルヴァリン」や、押切蓮介原作の実写ホラー「サユリ」などを観たりしておりまして、そこらの絡んだ話も書こうと思っていましたが、ページが足らなくなりました。まあ気が向いたらB録の方ででも書かせていただきます。