編集者の端くれとして最近最もショックを受けたのが、テレビドラマ化のトラブルがきっかけで、原作者のマンガ家さんが亡くなるという、ありえない、あってはならない大事件でした。
実は、マンガや小説のドラマ化やアニメ化の際にはよくある話で、なぜそこまでこじれたのか、謎でした。
が、雑誌『創』が、作者と脚本家二人の、削除されてしまった文章を掲載してくれたので、読んだら、だいたいわかりました。
限られた情報からではありますが、たぶん想像できる通りの行き違いと誤解、コミュニケーション不足が原因でしょう。
事件全体をジグソーパズルの絵とすると、左右にマンガ家さんと脚本家さんの絵があるわけですが、真ん中の、テレビ局のプロデューサーさんと、小学館のエライさんが入るはずのピースが、空白になっています。
公表部分だけでも、空白部分の想像はつきますが、正直なコメントを引っ込めなければならないようなSNSの状況が、残念で、コワイです。
脚本を8話まで書き直し、最後の9◦10話に至っては、脚本すべてを書き下ろすなんて、もちろんマンガ家の仕事ではないわけで、作者が疲れ果てていたことも想像がつきます。
作者が文字通り結果的に命をかけて守ろうとしたのに、今は、原作コミックスも入手できず、ドラマ映像も封印状態……それでは本当に浮かばれません。
俳優さんたちには何の罪もないわけですし、遺作となってしまった作品、せめて、早く読めるように、見られるように、していただきたいものです。
そのためには、まず、単純に、欠けているピースが埋まること、起こった事実がきちんと公表されることしかないでしょう。
ただ、再発防止のためには契約書をきちんとかわせばいい、という意見にはあまり賛成できません。
出版界は元々「口約束」も守るという紳士的な業界なので(笑)良い(面白い)作品にして商業的にも成功させる、という点では、みんな一致しているので、納得のいく落としどころを探して話し合える信頼関係を築くのが大事です。
ということもモチロン難しく、僕自身もいくつも失敗していたわけなのですが、創作やエンターテインメントの現場で、弁護士さんを挟んでやりとりするのは、やはり避けたいところだと思っています。
◎ゴジラ プラス評価?
『君たちはどう生きるか』と共にアカデミー賞受賞という快挙に、勝てば官軍、新聞もテレビも大絶賛の嵐ですが、少数精鋭のスタッフで、人件費がかからない低予算で、それでもアメリカに勝った勝ったと喜んでいるのは、大和魂で頑張れば、物量でまさる米軍にだって勝てるはずという、戦争中の無茶な精神論(?)と、変わらないのでは?
良くも悪くも、高いクオリティの作品を低予算でもつくれる、というお手本になってしまったような…
もうひとつ、せっかく『オッペンハイマー』と一緒のノミネート&受賞だったのに、初代ゴジラをリスペクトしている日本人の監督が、原水爆に言及するコメントを出さなかったのも、ちょっと気になりました。
◎マンガ的大谷ドラマ
スポーツ新聞でも、しょっちゅうマンガ的ヒーローだと見出しや解説で言われていた、大リーグの大谷選手。
奇跡のシナリオでWBCの試合を締めくくり、その後、強いチームに、しかも最高契約額で移籍した時点で、マンガ的にはこれ以上ないハッピーエンド、終わったかなと、思いました。
弱いチームにいて大活躍してこそのマンガなので(笑)
エンジェルスでの「赤の時代」見事に完結!
かと思ったら、なんと、予想外の早さでまさかの結婚発表、そしてタイミング抜群の奥さん公開。
さらに、二刀流じゃなくバッターに専念したら、ナント打率5割キープするかもしれない打撃力!?
さらに、まさかまさかの相棒通訳の、ギャンブル依存症による裏切り……
結婚と裏切り…それはBL的にはどうなのかも気になりますが(笑)それはさておき、ドジャース大谷の「青の時代」、これからのストーリー展開も、目が離せなくなってしまいました♫
ちょうど出た、アシスタントをなさっていた北見けんいち先生の『トキワ荘の遺伝子』でも、
赤塚不二夫先生がフジオ・プロの若い社員に横領されたことがあったが、「まだ若いのに前科がついたらかわいそうだ」と被害届けを出さなかったそうです。
一億八千万円!
◎『JUNEの時代』
すみません、告知です。BL前史としての『JUNE』とその周辺の状況をまとめた僕の自伝的回想録(?)が、5月に刊行予定です。出版社は、知る人ぞ知る亜紀書房さん。
紙の本、ぜひ買ってください♫
元『JUNE』企画◦創刊 編集者
現 京都精華大学 マンガ学部 佐川俊彦
前回記載、流転さんがリモート参加したアズの座三回は2022年の間違いでした。訂正いたします。